お勧め度: ★★★★★ あらすじ  「“ずっとずっと南の地球の先っぽに天国にいちばん近い島がある” ―亡き父が、幼いころに話してくれた“夢物語”。 ある時、一年中花が咲き、マンゴーやパパイアがたわわに実る島を知り、 そこだ!と確信。とある人の善意により旅立つことに。 行先は、南太平洋に浮かぶ島、ニューカレドニア。 船に揺られて辿り着いた先は、絵に描いたような夢の国?それとも・・・?」 1964年に刊行され、瞬く間にベストセラーとなった、著者自身の旅物語  今となっては、海外旅行なんて、バイトしてお金貯めたら行けるし、 パスポートやVISAの申請もそこまで苦労しないけど、 44年前は、「海外」ってだけでも、限られた人が行くってイメージやし、 ほんまに‘大変’やったんやろうなって思う  精神的にも金銭的にも  でも、そんな「障害」にめげず、行って実際に生活したからこそ、 かけがえのないモノが得られたんやろうなぁ  盲腸の手術の時に、徹夜で看病してくれたのも、 日本人の二世の人と、現地人で彼の奥さん  “たった一言の挨拶が、人の心を動かす” ―こんな、普段気付けない大切なことを、身に染みて味わうって、 一番幸せなコトなのかもしれないなぁ  後、読んでて好感を抱くのが、作者の人柄の良さ  むやみやたらと写真を撮らず、 現地の人と一体になって日々の生活を楽しみ、 何事にも挑戦する  こんな風になりたいと、憧れる  一番、重みのある行は、 私は運というものの不思議さを感じた。この扉を、私は自分の手で開けたのだ。(P.141) チャレンジ精神というものは、年齢に関係なく、 何時までも抱き続けなければならないモノやね
お勧め度: ★★★★ あらすじ  「研究者としての道を断念し、教員をしている、 天才数学者、石神。母ひとり子ひとりで暮らす隣人の靖子に、 淡い恋心を抱いていた。 彼女たちが、前夫を殺害したと知った石神の頭にまず浮かんだのは、 “自分が守らねばならない”―純粋な男の揺るがない想いによるトリックを、 旧友である、‘ガリレオ’こと湯川学は、見破ることが出来るのか・・・?」 2005年、ミステリーに関する賞を総ナメし、 2006年、第134回直木賞を受賞した、 ‘ガリレオ先生’シリーズ初の長編  10月12日には、映画も公開される  物語の構成は、いたってシンプル  別れた夫を殺害した靖子と彼女のひとり娘を守るために、 石神がたてたトリックを、 おなじみの草薙刑事&ガリレオ先生コンビが解明していく  初めから犯人は分かってるし、偽装工作も大したことないなぁと、 “錯覚”し、謎が解けた気で読みすすめてしまって、 ラストに、心臓を鷲掴みされたような衝撃を受けた  完敗デス  人間の“思い込み”を上手く利用した作品やと思う  後、胸を打つのは、石神の靖子に対する、 何びとにも勝る深くて清い愛情  いくら「好き」やからって、赤の他人の為にあそこまでする人はおらんやろ  でも、愛する人の幸せのためなら、他の奴はどうなってもいいって言う、 盲目的な愛は清くないか  むしろ、習字の墨みたいにドス黒いのかも  その想いを、もっと違った形で使ってほしかったなぁ  そんな石神の生き方を表している一文は、 得られるものはすべてかゼロか。(P.264) 自分に正直に、シンプルに生きることが、一番難しいのかな
お勧め度: ★★★★ あらすじ  「どんな人間で、何を思って、何のために生きてるのか。 自分でもよくわかってない―「一応」、カメラマン志望の女子大生の「私」。 合コンで知り合った男に遊ばれ、腹が立ってデジカメで撮ってみるも、ピンボケ。 でも、本当に大切なモノに気づけた・・・「ピンボケな私」を含む、 全5編の、くすっと笑える短編集。」 ‘ピン芸人’としておなじみの劇団ひとりが描く、 ユーモアたっぷりの人情味溢れる世界  これが初めての作品なんて、ほんまに凄い  まず、各編の主役の設定からして、一味違う  ホームレスを夢見る、サラリーマン。 売れないアイドルを一途に応援する、オタク。 合コンで出会った男に遊ばれる、女子大生。 借金まみれの末、おばあちゃんに「オレオレ詐欺」を働く、ギャンブラー。 そして、場末のキャバレーの舞台に立つ、お笑いコンビ。 どんだけ濃いねん!ってツッコミたくなる  その上、彼らがビミョーに繋がってるっていう仕掛けにも驚かされる  やっぱ、世界は狭いって思ってしまう  そして、最大の魅力は、出てくる人たちの人生が、 堕ちるトコまで堕ちたって感じた時に、 一瞬、キラリと光るトコロ  生きていると、それだけで辛いコトや苦しいコトの連続やって思いがちやけど、 ちゃんと“幸せ”な時も訪れるということを教えてくれてる  一番心に残った呟きは、 「そもそも私は自由なんか欲していなかった」「道草」(P.14) “忙しい”、“しんどい”って言ってるうちが、 華なんやろうなぁ
お勧め度: ★★★★ あらすじ  「私、隆之さんの赤ちゃんができたのよ―不妊に悩む恭子の耳に響く、 夫の不倫相手の勝ち誇った声。 怒りに狂い毒殺するも、被害者は妊娠などしていなかった。 嵌められた・・・全てを悟った恭子が選んだ道とは・・・?」 著者の処女作  当初、自費で出版されるも、一年後に単行本として刊行された  作品の深い味わいが、読み手の心を少しずつ動かした結果やと思う  それに、来月の6日、7日には、米倉涼子主演でドラマが放映される予定  登場人物の設定がだいぶ違うけど、 ドラマはドラマとして楽しめそうな、豪華なキャスト  楽しみやなぁ  物語の構成は、殺人者である恭子と、 所轄のベテラン刑事、戸田の二人が、交互に語る形式。 近づきがたい美人で勝気な女と、細かい点に執着する、粘着質な男 ―まるで、女王蜂と働き蜂。 そんな二人の一歩も譲らない駆け引きは、 スリル感があって、凄く面白い  次に、多彩な登場人物  全部で10人以上いるのに、ひとりひとり丁寧に描かれていて、 全くブレてないし、いてほしい人がちゃんといてくれるから、 読みごたえは抜群  裏切る家政婦とか、目ざとい女友達とか笑  それに、恭子が、陥れられた「罠」の真相を知るにつれて、 ‘犯罪者’として成長していくのも魅力のひとつ  一時の感情の高ぶりで犯行を行うが、 次第に狡猾な計画犯へと進化する・・・憎しみで凍った心には、 何びとも寄せ付けない意志の強さと信念が宿ってる  そんな恭子の性格を自身で表しているのが、この行。 わたくし、誰にも屈しません。もちろん、警察という権力にも。それがわたくしの生き方。(P.496) 罪を犯したけれど、女として凄く惹かれる主人公やった
お勧め度: ★★★★★ あらすじ  「専業主婦で、三歳になる一人娘がいる、小夜子。 一方、ベンチャー企業の社長で、バリバリのキャリアウーマン、葵。 ハウスクリーニングの仕事に応募した小夜子と雇い主の葵は、 大学の同期だったと知り、意気投合。 しかし、≪主婦、子持ち≫⇔≪独身、子どもがいない≫などの、 世間のレッテルにより、徐々に隔たりを感じるようになり・・・」 2005年、第132回直木賞を受賞  テーマは、女の友情  ベタやし、陳腐なモノになりがちやけど、 この作品は、まず、視点が面白い  語り手は、三十路を少し超えた、専業主婦の小夜子と、 高校生の時の葵。 小夜子の生きている‘現在’と、葵のひと夏の‘過去’が、 交差したと思ったら離れるっていう、絶妙なあんばい  上手いなぁ  次に、徹底した対比  ‘現在’の二人の社会的立場や、ソトからみた性格は、ほんまに対極。 専業主婦、子持ち、引っ込み思案、内気、そして地味な小夜子。 それに対して、女社長、キャリアウーマン、独身、快活、饒舌、それに派手な葵。 巷で流行りの、‘勝ち組’、‘負け組’の心理を見事に描き出している  とはいえ、人生に「勝ち負け」なんて、元々存在しないんだけどね  後は、おなじみの際どい筆使い  クスクス笑える〜こんなんあるある〜と思ったら、 背後から突き飛ばされたような衝撃を受けたり・・・にくいわぁ笑  一番同感した、葵の語りは、 異国って、『ここ』とは違うじゃない、人はみんなわかりあえるとか、人間なんだから同じはずとか、そういうのは嘘っぱちで、みんな違う。みんな違うってことに気づかないと、出会えない。(P.164) みんな違う。同じ人間なんて、いない。 だからこそ、人との出会いは、かけがえのないものなんよね
お勧め度: ★★★ あらすじ  「‘押し屋’―押して轢かせる殺し屋。 元教師の鈴木は、妻の命を奪った青年が、 押し屋によって車に轢かれる瞬間を目撃し、彼の後を追うことに。 ‘自殺’に導く専門家・鯨、ナイフ使いの殺し屋・蝉も、 それぞれ押し屋を追い求める。 犯人の正体とは?三人の行き着く先とは・・・?」 著者の初めての“ハードボイルド”小説  この作品の特徴は、何といっても物語の描き方  三人の語り手が交互に話を進める、一人称小説  一人目は、妻をひき逃げによって殺された、元教師の“鈴木”。 殺害犯である青年の父、寺原が社長を務める≪令嬢≫に入社し、 復讐の機会を窺っている。 二人目は、独特の語りで、どんな人間でも赤子のように容易く誘導し、 自殺に追い込むスペシャリスト、“鯨”。 愛読書は、ドストエフスキーの『罪と罰』。なんか、憎い笑  三人目は、ナイフを使った惨殺を得意とする若者、“蝉”。 ジャック・クリスピンを敬愛する上司、岩西に搾取されている、 と本人は感じている。 一見、闇の社会に生きていることくらいしか共通点の無い三人が、 寺原の息子がひき逃げされたことをきっかけに、距離を縮めていく  語りが、三人交替のためか、人物描写が多少ピンボケしてるけど、 着眼点は面白いし、斬新やし、何より読みやすい  それと、目を引いたのは、事故や殺害シーンの描写  まるで、ビデオをスロー再生しているかのように、 車のボンネットが腿にめり込む場面や、 ナイフが腹部に刺さる情景が、細部まできちんと書かれている。 リアル過ぎて、多少気分が悪くなるかも  一番印象的だった行は、 人はただ生きていて、目的はない。死んでいるように生きているのが、通常なのだ。その事実を知って、死を決断する。(P.263) 絶望って、こういうことを意味しているのかな
お勧め度: ★★★★★ あらすじ  「鴨川との遠距離恋愛。 介護福祉士としての激務に耐え、充実した日々を送る、かれん。 対照的に、“スランプ”に陥り悶々としている、勝利。 定期的な連絡も途絶えがちで、苛立ちや焦りが募り、 暴言を吐き、かれんを深く傷つけてしまう。 果たして、遠恋は上手くいくのだろうか・・・」 シリーズ10作目であり、第一シーズンの締めくくりとなる作品  遠距離恋愛―お互いをどれだけ信頼出来るかにかかっている、 恋愛のひとつのカタチ  嫉妬、疑心、不安、焦り、苛立ち・・・いわば‘負’の感情が、 ふとしたコトで溢れ出てきそうになるくらい、精神的にキツイし、 上手く行かない場合が多い  現実でも、小説でも  けど、本作では、ドロドロした感情をぶちまけて、心の内を全てさらすコトで、 からまった想いの紐を解きほぐして、絆を深めている、 まさに理想的な‘遠恋’のモデル  素敵やなぁ  後、気に入ったのは、終盤に出てくる‘蛍’の描き方  てのひらに掴めそうで掴めない様子からは、 募る想いを上手く伝えられないもどかしさが感じられるし、 蛍の優しい明りに照らされて結ばれる情景は、 めっちゃロマンチック    何度も読み返したくなる  一番気に入った行は、 こんなふうに、何かきれいなものを見つけた時や、嬉しいことがあった時、映画や本に感動したり、誰かのひとことに心動かされた時―今のこの思いを伝えたい、分け合いたい、と願う気持ちの強さはそのまま、そのひとに注ぐ想いの強さなんだろう。(P.99) こんなにもまっすぐで、ひたむきに想い合える相手に巡り合いたいなぁ
お勧め度: ★★★ あらすじ  「一人娘の命が奪われた。 花火大会の帰りに、拉致、蹂躙の果てに川に捨てる―人を“玩具” として扱った、残忍な犯行。 密告電話によって、犯人の少年の名が告げられた時、 あなたなら、心の刃を向けますか・・・?」 著者の最新文庫&2008年度、角川文庫夏の100冊に選ばれた作品  “未成年の犯行”=“刑罰が軽い”という、少年法が抱える問題と、 遺族のやり切れない思いを、サスペンス仕立てに描いた作品  前評判の良さを裏付けるように、心をえぐられるような犯行、 ハリウッド映画のように、安定感のある物語の展開は良いんやけど、 そこまで意外性が無かった  筆が落ち着いてきたっていうことかな  とはいえ、色々考えさせられた  まず、遺族や被害者の現状。 “知らぬが仏”という言葉があるように、 辛いことは耳に入れない方が良いという、“一般理論”がまかり通ってるけど、 自分の大切な人が巻き込まれた事件の詳細は、知らずにはいられないと思う。 全てを知ったからと言って、心の空洞が埋まることは無いかも知れないけど、 うやむやにされるよりかはましかな・・・理想論かもやけど  それと、命の“重み”。 見ず知らずの人の命を、自分のエゴで奪う人たち。 そんな殺人事件の特集を競うように組んでは、 昼間ののほほんとした雰囲気を、 出口の見えない闇に変える、マスコミ  ひとの命って、そんなに軽いモノなのかな・・・。 一番、胸に悲しく刻み込まれた一文は、 愛する者を理不尽に奪われた人間には、どこにも光はないのだ。(P.96) やり場の無い怒りを鎮めるなんて、此の世で一番の苦行やわ
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